第1話「茶タブー」

『クロとチャッピーの物語』へようこそ。

このシリーズでは、4コマ漫画では描ききれなかったクロとチャッピーとの毎日を、当時の写真とともに綴っていきます。

茶タブーがチャッピーになるまで

チャッピーが初めてうちにやって来たころ、まだ私たちは、この大きな茶トラの名前さえ知りませんでした。

ある日、ベランダに現れた茶トラ。

よく見ると、手のひらにひどいケガをしていました。

かなり腫れていて、血も出ている。

ケガをした手で、初めてわが家にやってきた茶タブー

「ひどいケガだね……」

「この子、もうだめかもしれないね」

母とそんな話をしていました。

ところが、この茶トラ。

次の日も来る。

また次の日も来る。

そしてそのうち、開いているベランダから堂々と家の中へ入ってくるようになりました。

ご飯を出すと、普通に食べる。

それだけではありません。

のしのし、のしのし。

少しずつ奥へ入ってきて、先住猫のクロを押しのけながら家の中を探検(笑)。

人の顔色はちゃんと見ているのです。

「ここまで行っても大丈夫かな?」

そんな感じでこちらを見ながら、どんどん入ってきます。

クロは、

「あっ……あれっ……💦」

という感じ(笑)。

最初のころは、おっかなびっくり手をちょいちょい出していましたが、大きな茶トラはほとんど相手にしていませんでした。

その猫、茶タブーかもしれない

そんなある日。

近所の方から、

「もしかして、ケガをした茶トラ見たことある?」

と聞かれました。

「えっ!今、うちに来てるよ!」

すると、

「もしかしたら茶タブーかもしれない!見に行っていい?」

やって来て、その茶トラを見るなり、

「あ~、やっぱり!茶タブーだわ!」

ここで初めて知りました。

この子には、すでに名前があったのです。

茶タブー。

10歳を超えているらしいこと。

腎臓が悪いこと。

そして近所のお宅で、ずっと面倒を見てもらっていた地域猫だったこと。

本当は家猫にしてあげたかったそうです。

でも、そのお宅にはすでに先住猫が5匹。

どうしても折り合いが悪く、すぐケンカになってしまうので、家には入れられず、外で面倒を見ていたそうです。

しばらく姿を見せなくなっていたので、

「もう死んじゃったのかと思ってた」

とのこと。

「茶タブー、生きてたんだね~。よかった」

そう言っていました。

なんだか憎めない顔をしていて、人なつっこい。

そのころの私たちは、

「このまま成り行きに任せよう」

くらいに思っていました。

ただ、その方からは何となく、

「この家で飼ってくれないかなぁ~」

という暗黙の圧も感じましたけど(笑)。

冬の朝、「なお~~ん」

手のケガは、ほかの家の方が薬をつけてくれたりしていたようで、少しずつよくなっていきました。

そして季節は冬へ。

朝、ロールカーテンを上げると——

茶タブーがいる。

「なお~~ん」

窓を開けると、当たり前のように入ってきます。

そしてストーブの前に、

ど~~ん。

ご飯を食べて、暖かい部屋でくつろぐ。

ストーブの前は、すっかり茶タブーの定位置になっていました。

腎臓が悪いと知っていた近所の方が、腎臓病用のフードもたくさん持ってきてくれました。

「茶タブーに食べさせてね」

だんだん、この家の居心地がよくなってきたんじゃない?

そう思っていました。

でも——

必ず帰るのです。

「どこに行ってるんだろうね?」

見ていると、どうやら何軒も巡回している。

茶タブーには茶タブーなりの、パトロールの順番があったようです。

うちはどうやら、

朝ごはん担当(笑)。

初めてのお泊まり

白老は雪の少ないところですが、それでも雪が積もる日はあります。

そんな朝でも、カーテンを開けると、

「なお~~ん」

いる(笑)。

ある日は昼からやって来て、いつものようにストーブの前でくつろいでいました。

だんだん外は暗くなってきます。

「茶タブー、今日は泊まっていく?」

でもその日は、真っ暗な外へ出ていきました。

「おお~~ん」

と鳴きながら。

「泊まっていけばいいのにね……」

このころには、母も私もずいぶん茶タブー寄りになっていました。

それからしばらくして。

ついに、茶タブーが初めて泊まっていく日が来ました。

それがもう、本当に自然に。

「大丈夫かな?夜鳴きしないかな?」

少し心配しましたが、何事もなく朝までいました。

ところが朝。

「なお~~ん!」

出せ~~!

(笑)

「雪も降って寒いのに行くの?」

「なお~~ん!」

そしてまた外へ。

それからは、ときどき泊まっていくようになりました。

でも朝になれば、雪の中をのしのし歩いて帰っていく。

その後ろ姿は、たくましくもあり、ちょっと哀愁もありました。

雪の上には、大きな足跡が点々と続いていました。

「あっちの家にも行ってる(笑)」

そして、来なくなった

ところがある日。

朝、カーテンを上げても茶タブーがいません。

次の日もいない。

「どうしたんだろう……」

獣の多い地域です。

「アライグマにやられちゃったのかな……」

来れば来たで当たり前になっていたのに、来ないと気になる。

もうすっかり情が移っていました。

そんなある日——

来ました。

茶タブーです。

「よかった!生きてた!」

……ところが。

今度は、顔にひどいケガをしていました。

「茶タブー、どうしたの!」

「またケンカしたの?」

傷はひどく、やがて異臭までしてきました。

もうこれは放っておけない。

母も私も同じ気持ちでした。

もう、朝帰りさせたくない。

でも相手は、長年自由に生きてきた地域のボス猫。

この子が本当に家猫になれるんだろうか。

近所の方にも相談しました。

「ケガばっかりしてるし……どうしたもんかね」

すると、

「いや~、家猫にしてくれたら私たちも安心だわぁ」

そして、

「このまま外にいたら、この子すぐやられちゃうよ」

そうだよね。

病院へ連れていこう。

茶タブーから、チャッピーへ

覚悟を決めて、茶タブー確保!

長年外で生きてきた元ボス猫です。

大捕物になるかと思いきや……

全然抵抗しない(笑)。

拍子抜けするほど、すんなりでした。

病院で傷を処置してもらい、エリザベスカラーをつけ、抗生剤で治療。

病院から帰ってきた茶タブー。エリザベスカラー姿で療養中。

そして2026年1月29日。

この日から、茶タブーは外へ帰る猫ではなくなりました。

うちの子になりました。

名前も——

「チャッピー」。

……とはいえ。

人間は、

「今日から家猫ね」

と決めましたが、チャッピー本人が納得していたかどうかは別の話(笑)。

外へ出たい。

「あおおお~~ん!」

出してくれ。

「がおおお~~ん!」

そして2月7日には、外へ出たくて段ボールを盛大に破壊。

あまりの迫力に、途中でクロまで逃げました(笑)。

元ボス猫チャッピーの家猫生活は、こうして始まりました。

あのころは、まさかこの大きな茶トラが、こんなにも私たちの暮らしの真ん中に入ってくるとは思っていませんでした。

朝ごはんを食べに来るだけだった茶タブー。

雪の中でも帰っていった茶タブー。

何軒もの家を巡回していた茶タブー。

その猫が最後に選んだ場所が、わが家でした。

そしてここから、

クロとチャッピー、本当の二匹暮らしが始まります。

🐾 つづく