第74話「まだ、やることがある」

チャッピー 最期の10日間

9月13日。

チャッピーが旅立ったあと、
私はしばらく、チャッピーのそばにいました。

悲しい。

もちろん悲しい。

でも――

今は、泣いている場合じゃない。

前から、もしもの時のために、
猫が亡くなったあとに何をすればいいのか、調べてありました。

その時になって何もわからなくなってしまうのが、怖かったからです。

だから私は、自分に言い聞かせました。

「あとで悲しめばいい。
今は、やることをやらなくては」

母はたぶん、ぐだぐだになる(笑)。

こういう時は、私がやるしかありません。

まず、チャッピーの体をきれいにしました。

目のまわりを拭いて、
口のまわりもきれいにして。

前足も、ちゃんと整えて。

そして顔を何度も撫でました。

いつものチャッピーの顔になるように。

「おい!
ちゃんと元の姿にしてくれよ!」

そんなことを言われているような気がして、

「わかってるって」

と言いながら、また顔を撫でる。

そして――

大好きだったちゅーるも、たくさん。

もう食べられないけれど、
これは絶対に忘れちゃいけない(笑)。

食いしん坊のチャッピーですから。

体のまわりには、
凍らせておいたペットボトルを置きました。

そして、用意してあった箱に寝かせて、
新しいタオルをかけました。

ここまでやって、ようやく少しだけ息をつきました。

でも――

まだ、やることがある。

葬儀をお願いするところへ電話をしました。

翌朝、9時。

おやつも、お花も一緒に入れていいとのことでした。

これで、明日の準備もできた。

電話を切ると、
急に力が抜けました。

だけど、まだ終わりじゃない。

チャッピーを、
最後までちゃんと見送らなくては。

不思議なもので、
私はこういう時、妙に冷静になります。

夫を見送った時も、そうでした。

何をしたらいいのか。

次に何をしなければいけないのか。

そればかり考えて動いていました。

そして夜。

近所の、ずっとチャッピーのことを気にかけてくれていた人が、会いに来てくれました。

その人にとっては、今でもチャッピーではなく――

「茶タブー」です。

チャッピーの顔を見て、

「茶タブー……いい顔してるね。
おつかれさまね~」

そう言ってくれました。

そして、

「茶タブーはここに来て幸せだったはずだよ。
家の中で死ねたんだから。

外にいたら、弱って動けなくなったら、
すぐにやられちゃうからね」

そう言われて、

ああ……そうだな。

と思いました。

チャッピーが家の中で暮らしたのは、
一年にも満たない時間でした。

でも、

好きなものをいっぱい食べて、

あったかいところで寝て、

安心して眠れる夜があって。

クロもいて。

母もいて。

私もいて。

短かったけれど、
ぎゅっと詰まった時間だったと思います。

……考え始めると、きりがない。

だから今日は、ここまで。

明日は、チャッピーを送ります。

まだ、私にはやることがあります。

🐾